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相続手続の基本的な流れ

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1:相続とは?

そもそも相続とは何でしょうか?

「相続」とは亡くなった人(被相続人)の資産や義務権利が他の人(相続人)に引き継がれることを言います。

貯金や不動産などのプラスのものだけではなく、借金などのマイナスになるものも引き継がれるのが特徴です。

2:遺言書の有無の確認

相続は以下の2つのパターンに分けられます。

  1. 遺言書による相続
  2. 遺言書がない場合の遺産分割

遺言書の有無が相続の手続きに大きな影響を与えるため、まずは相続にあたって遺言書があるかを確認するところから始まります。

確認方法としては、亡くなった人の自宅や金庫、銀行の貸金庫を調査したり、公証役場に公正証書遺言が残っていないか照会をすることになります。

遺言書による相続

遺言書とは「亡くなった人が生前に作成する、死後の財産の処分方法などを指定する法的な書面」のことを言います。

財産の処分方法のほかに、相続廃除(相当の理由に基づいて対象の相続人から相続権をはく奪すること)や遺言の執行人の指定、誰に未成年の子どもの世話を任せるかなども記載することができます。

遺言書がある場合は、その内容に従って相続が行われることになります。

遺言書がない場合の遺産分割

遺言書がない場合は、法律の定める相続人(法定相続人)が法律の定めにより相続し、財産を分ける手続を行って引き継ぎます。
この方法でなされる相続のことを「法定相続」といい、法定相続人が具体的に財産を分ける手続のことを「遺産分割」と言います。

遺言書の種類と自筆証書遺言の際の流れ

遺言書には普通方式遺言特別方式遺言の二つがありますが、特別方式遺言は普通方式遺言ができない特殊な状況の中で選択されるものです。

普通方式遺言は自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があり、それぞれにメリット・デメリットがありますが、遺言書の別の記事でまとめてご紹介致します。

見つかった遺言書が自分の手で書いて作成された自筆証書遺言である場合には、勝手に開封することはできません。

封緘されているか否かを問わず、別途、家庭裁判所で検認の手続を行う必要があります。

3:遺言書による相続の詳細

遺言書がある場合には、死亡と同時に遺言で指定された人が遺言で指定された財産を取得し、財産を取得した人が遺言書を使って、不動産の登記名義を変更したり、預貯金の払戻し・名義書換等を行うことができるという流れとなっています。

遺言の内容が他の法定相続人の遺留分(遺言によっても奪うことができない相続財産に対する割合)を侵害していて、遺留分侵害額請求権を行使された場合には、遺言の内容どおりの相続が実現しないこともあります。

遺留分侵害額請求権の行使期限は、相続の開始(死亡したこと)及び遺留分を侵害されたことを知った時から1年です。

遺言書があっても、法定相続人全員の合意がある場合には、遺言とは異なる内容の相続を行うことが可能です。

4:法定相続による遺産分割の手続きの詳細

遺言書がない場合には、死亡と同時に法律による相続(法定相続)が発生し、法定相続人によって相続財産を分ける遺産分割の手続が行われることになります。

特に遺産分割に関して期限はありません。

まず相続人間で、誰がどの財産をどのような割合で取得するか話し合いを行います。(遺産分割協議)
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。

相続人全員の同意があれば、ある相続人が全てを取得し他の相続人が何も取得しないと定めるなど、どの相続人がどの財産を取得するか、自由に決めることができます。

そして、遺産分割協議で決められた結果を遺産分割協議書という書面にまとめます。

もし遺産分割協議がまとまらなければ、最終的には裁判所の調停・審判を経て、法律が定める割合(法定相続分)を基準として、遺産分割がなされます。

遺産分割によって財産を取得した人は、遺産分割協議書や、遺産分割の調停調書・審判書を使って、実際に、不動産登記の移転名義の移転や、預貯金の払戻し・名義の書き換えを行うことができるようになります。

5:相続税申告

亡くなった人の財産を取得した人は、相続開始の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告を行い、相続税を納付しなければなりません。

相続した財産の金額・内容によっては相続税の申告・納付が不要な場合もあります。

遺言書がなかった場合で10ヶ月以内に遺産分割が完了していない場合、法定相続分にしたがって相続がなされたものとして税額を計算して一旦申告(未分割にての申告)を行い、その後に遺産分割が完了した段階で修正申告を行うことができます。

期限である10カ月を過ぎると延滞税がかかるので、相続が開始された段階で相続税申告のタイミングはよく覚えておく必要があります。

6:相続放棄と限定承認

亡くなった人が借金をたくさん残していた場合、遺言書の有無にかかわらず、法定相続人が法定相続分に応じて借金を引き継ぐことになります。
相続人の間の話し合いでも、相続する借金の割合は決めることができません。

借金を引き継がないようにするためには、相続人となったことを知った日から3ヶ月以内家庭裁判所で以下の2つのどちらかを行う必要があります。

  1. 相続放棄の申述を行う(この場合プラスの財産も相続できなくなりますので、よく検討する必要があります)
  2. 相続で得たプラスの財産の限度でのみマイナスの財産(負債)を相続するという限定承認の申述をする

限定承認は相続財産から引き継いだ借金などを清算し、財産が余るならそれを引き継げる方法ということができます。

限定承認は相続人となった人全員が共同で申し立てを行う必要があるのに対し、相続放棄は各相続人が単独で行うことができるという違いがあります。

明らかに借金がプラスの財産より多いことが分かっている場合は相続放棄が有力な方法となりますが、借金があったとしてもどうしても相続したいものがある場合や債務超過しているかが不明といった場合には限定承認が効果的だと言えます。

期限は3ヶ月以内となっていますが、3カ月以内に方針が決まらない場合は期間延長を家庭裁判所に申し立てることができますので、併せて覚えておきましょう。

今回のまとめ

相続の手続きの流れについて考えてきましたが、今回のポイントをまとめておきましょう。

  1. 遺言書がないかを確認し、あれば遺言に従って相続、なければ法定相続に従って相続人の間で遺産分割協議に入る
  2. 相続税申告は相続開始の翌日から10か月以内に行う必要がある
  3. 相続放棄や限定承認を行う際は、相続人となることを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う

細かな点は別の記事でも取り上げたいと思います。

以上、皆様の相続対策の参考になれば幸いです。